「買う気がないのに買ってしまった」
「他人は認めないけど、私はこれが好き」
そんな経験はないでしょうか?
私はあります。
なぜだか分からないけど、気づいたら相手の思いどおりになってしまっている。
本書は、そんな私たちの心理について解説した本です。
「影響力の武器」作:ロバート・B・チャルディーニ
社会で騙されたり、丸め込まれたりしないように
本書で紹介されている「心理(自動的反応)」について学んでいきましょう!
自動的反応「カチッ・サー」について
私たちの日々の判断は、その全てを能動的に考え選択しているわけではありません。
ときに私たちはもっともっと単純な思考で、もはや自動的に物事を判断していることがあるのです。
それはまるで、ラジカセのスイッチを「カチッ」と押したら、「サー」と音声が流れるように
私たちは、自動的に判断「カチッ」、そして行動「サー」してしまうのです。
例えば、
自然界では
七面鳥の親鳥は、小鳥の鳴き声をきっかけに、子鳥の世話をします。
そこで、七面鳥の天敵から「録音した小鳥の鳴き声」を鳴らしたところ
七面鳥の親鳥は、天敵にも関わらず世話を始めたそうです。
人間界でも
とある観光地の「宝石店」は、売上が伸びず悩んでいました。
そこで価格を2分の1にして売り出そうとしたところ
店員が誤って2倍の価格で売り出してしまいました。
しかし、2倍の価格にした方が、売上が伸びたそうです。
なぜこのようなことが起こるのでしょうか。
私たちは「値段が高いもの=良いもの」という
自動的な反応をしてしまったのです。
観光ということもあり、お土産に何かは購入したい
ただ何が良いものかはわからない
高い宝石ならばきっと良いものなのだろうと購入する。
そして、売上が上がったのです。
このような自動的な反応は他にもさまざまなものがあります。
また私たちは、このような自動的な反応を理解し、
自動的な反応を逆手にとる、悪質な商売や詐欺から身を守る必要があります。
今回は、本書からこれはと思った3つを紹介したいと思います。
- 返報性の法則
- 一貫性の法則
- 社会的証明
順番に説明していきますね。
返報性の法則
返報性の法則は、相手に親切にされたら、それに応えたいと思う心理のことです。
返報性の法則は、交渉などで相手から「YES」を引き出す、重要なテクニックです。
身近な事例でいうと、
スーパー・マーケット等での試食ではないでしょうか
試食をするとこんな美味しいものをタダで食べさせてもらって悪いなと思い
ついついその商品を買ってしまいませんか?
まさに返報性の心理が働いているのです。
また、返報性の法則が恐ろしいのは、様々に応用が効くところです。
例えば、「譲歩」には「譲歩」というものがあります。
価格交渉において、
冒頭で目的の価格より高い金額を提示し、その後、目的の金額に引き下げます(譲歩)
そうすると相手は、「金額を引き下げさせた」のだから、この金額でいいだろう(譲歩で返そう)
という返報性の心理が働くのです。
さらに恐ろしいのが、交渉に応じた側は、「金額を引き下げさせた」という満足度まで得ることになり、
全く得をしていないにも関わらず、その交渉に満足感を覚えてしまうのです。
さらにさらにこの世には、見返りを求めず善意で親切にしてくれる人もいます。
返報性を恐れて、善意を断ってしまうと、人間関係がうまくいかなくなるかも知れません。
返報性の法則は、本当に恐ろしいのです。
一貫性の法則
一貫性の法則は、一度心に決めた行動について、一貫性を通したいと思う欲求のことです。
例えば、
あなたがブランドの1万円のTシャツを買ったとします。
実際に着てみると、肌触りが悪く、さらに洗濯すると色落ちもします。
ですが、あなたはそのTシャツのことを調べて、
肌触りの悪さと色落ちは棚にあげて、
着れば着るほど味が出るだの、おしゃれは手間がかかるだの言い出し
そのブランドがもっともっと好きになるのです。
これは
「自分がいいと思い、高いお金を払い購入したTシャツは良いものに違いない(悪いわけがない!!)」
という一貫性の心理が働いているためです。
社会的証明
社会的証明は、他人が何を正しいと考えているかに基づき、モノゴトの正しいかどうかを判断する心理です。
例えば、
バラエティ番組等で、録音された笑い声を耳にしたことはありませんか?
これは視聴者がその笑い声につられて、面白い番組だと感じてしまう、社会的証明の心理を利用しているのです。
このような他人の模倣による心理効果は、子どもにもみられます。
親の姿を見て、子どもは成長するというのも、社会的証明の心理のひとつかも知れません。
また悪質な例で言えば、
“サクラ”や、”過大広告”などが身近に社会的証明を利用した商法です。
さいごに
変化が激しく、情報が飛び交う現代は、自ら考え判断する時間が少なくなっています。
だからこそ自動的反応を利用した、悪質な商売や詐欺に気をつけなければいけません。
本書では、今回紹介した自動的反応以外に3つ(計6つ)が紹介されています。
それらは全て、今まで生きてきて経験があるもので、
私たちの人生に大きな影響を与えたものだと思います。
これらの自動的反応を使うのは、時間と実践が必要です。
まずは知ることそして身を守ること
それだけでも、大きな価値があると思います。
さいごのさいごに
自動的反応のイメージとして出されている、ラジカセ「カチッ・サー」
ラジカセって、もう通じないのでしょうか、
原書は1985年のものです。時代の変化って本当に早いと思いました。
しかし、人間の自動的な反応は、不変のものです。
時間の進みによって、変わるものと変わらないものがある。
そんなことも本書から学ばせていただきました。