「何のために勉強をするの?」
「勉強は、社会に役立つの?」
と問われたとき、あなたはなんと答えますか。
私は困ります。
今回は、そんな気持ちを知ってか知らずか
「ミライの授業」作:瀧本 哲史
という本を読み、
ズバリこの問いに対する答えが見つかりましたので、
紹介したいと思います。
本書を読み終えた感想
「いつか子どもができたら、この本を送ってあげたいな」
と思いました。そんな作品です。
どんな本
著者は、2015年から全国の中学校を飛び回り、特別講義をしました。
その内容は「14歳の未来を生きるこどもたちへの特別講義」
本書は、そのエッセンスが凝縮された一冊となっています。
またその内容は、14歳だけでなく、かつて14歳だったわたしたちにも、刺さる内容となっています。
本書を読み終えると、胸が熱くなります。
ミライの授業
なぜ私たちは、勉強をするのか
本書の答えは「未来を変える魔法」を習うためです。
私たちは、ハリーポッターと同じなのです。
未来を変えるとは、世界を進歩させること
では、世界はどのように進歩してきたのでしょうか。
もう少し具体的に、
過去の偉人たちは、どのように世界を変えてきたのでしょうか。
そこに未来を変える答えがあります。
①世界を変える魔法、手段としての勉強
世間の常識を疑い、世界を変えた偉人の1人
“ナイチンゲール(1820〜1910)”を紹介したいと思います。
突然ですが、兵士の主な死因はなんだと思いますか
「戦場による致命的な負傷」
と思う方が多数ではないでしょうか。
当時のイギリスの常識もそうでした。
しかし、ナイチンゲールは違います。
彼女は、負傷した兵士が、劣悪な環境へ送り込まれること
床が腐り、壁には汚れと埃がこびりついた、不衛生な病院の現状を目の当たりにして
戦場に赴いた兵士が亡くなる原因は
劣悪な環境での「感染症」によるものだ
と仮説を立てました。
そこで彼女が、その仮説を証明するために使った武器が
看護師の道に進む以前に学んできた、数学・統計学だったのです。
ナイチンゲールは、戦死者の死因を分類し、グラフ化し、1000ページ近い報告書を作成します。
その報告書を、ヴィクトリア女王が直轄する委員会に提出します。
どんな権利者であろうと反論できない「客観的な事実」を突きつけたのです。
その結果、戦場や市民生活における衛生管理の重要性が知れ渡り、
イギリスはもとより世界の医療・福祉制度を大きく変えたのです。
②仮説に正確性は重要ではない、空白地帯に旗を立てろ
ナイチンゲールは、自身の仮説にどれだけ自信があったのか、
仮説にはどれだけの正確性が必要なのか
仮説に必要なものは、
「おおよその全体像」と「方向性」であり、
「正確性」はそこまで必要ではありません。
正確性は、進みつつ修正すればいい
むしろ仮説は誰もいない、空白地帯に立てることが大切である。
そんな偉人を紹介したいと思います。
大村智(1935〜)
大村さんは「イベルメクチン」という画期的な薬を開発した、日本人化学者であり、ノーベル生理学・医学賞の受賞者です。
ノーベル賞を受賞するような化学者なんて、エリート中のエリート、なんて思わないでしょうか。
大村さんはいわゆるエリートではありません。
むしろエリートではないからこそ、空白地帯に仮説を立て、自分だけの花を開かせた研究者です。
大村さんは、高校時代はスキーに没頭し、大学進学も考えていませんでした。
そんなある日、父親にやる気があるなら、大学に行ってもいいぞといわれ、はじめて大学進学を決意します。
第一志望の大学には不合格だっため、かろうじて合格した山梨大学へ進学しました。
大学へ進んでもスキー中心生活を送り、卒業後は、高校教師になるという、ごく普通の高校教師だった大村さん。
しかし、ここから「このままではダメだ」と立ち上がります。
大村さんが教えていたのは、夜間部の生徒たち
問題に取り組む生徒たちの指が、機械の油で真っ黒に汚れていたのです。
夜間部の生徒たちは昼間は、工場や工事現場で働いて、仕事の後に学校に通っています。
その境遇を目の当たりにした大村さんは、
自分ももう一度学び直そう!
と立ち上がります。
ここから大村さんの化学者としての道がスタートします。
数年が経ち、少しずつ、着実に化学者としてキャリアを積み上げた大村さんですが、
ここで「空白地帯」に仮説を立てる力が発揮されます。
人間の病気を治す薬は、世界中の研究者が莫大な予算を使って研究している。
そこで勝負しても勝ち目はないだろう。
では「動物の薬だったらどうだろう」
それならライバルも少ないし、
動物が病気から救われるのなら、たくさんの喜ぶ人がいるはず、
さらに動物用の薬が、人間用の薬として役立つかもしれない。
この「仮説」のとおり、発明された「イベルメクチン」は、動物だけでなく、人間にも効果を発揮する薬として、世界中の病に苦しむ人を救います。
そしてその功績が讃えられ、ノーベル生理学・医学賞を受賞するのです。
③みんな勇者じゃなくていい
世界を変える偉人は、まるで勇者のように「パーティ」を組んで、世界に挑んでいました。
世界を変える偉人の裏には、戦士、魔法使いのように「影の主役たち」がいます。
ここで1人の偉人を紹介したいと思います。
伊能忠敬(1745〜1818)
伊能忠敬は、日本地図を作成したことで有名ですが、
彼が、江戸へ旅立ったのは50歳を過ぎてからです。
忠敬は、19歳も年下の天文学者・高橋至時に弟子入りします。
のちの「影の主役」が高橋至時です。
天文学を学んでいった、忠敬の一つの目標
「この地球の、正確な大きさを知りたい」
具体的な計算方法は省きますが、
地球の大きさを知るためには、
北極星が見える角度が「緯度」と一致するため、江戸と北海道から見える、北極星の角度の差と、
移動した距離(北へ移動した距離)から算出することができるのです。
しかし当時の日本は、藩ごとに独立した状態であり、
藩を行き来するには、幕府から許可を得る必要がありました。
そこで、高橋のアイデアが「北海道の地図をつくること」
だったのです。
幕府は、諸外国から自国を守るために、正確な地図を求めていました。
そこで高橋は、ロシアから北海道を守るため、地図作成の仕事を伊能忠敬に任せてほしいと、幕府と交渉したのです。
そして幕府公認の測量隊となり、北海道までいくことができたのです。
忠敬にとって、本来の目的は地球の大きさを知ること
その手段として、高橋のサポートを取り付け、北海道の測量と地図作りを申し出ました。
高橋は、結核を患っていたため、測量の旅へ出ることができなかったため、幕府に働きかけ、忠敬の北海道行きを支援します。
影の主役がいなければ、あの「日本地図」は存在しなかったのです。
④「新人」だからこそ、世界を変えられる
世の中を変えるのは、いつも「新人」である。
若い人や別の分野から参入した「よそ者」、「シロウト」が世の中を変えていく、
この言葉一番ふさわしい人物 J・K・ローリングを紹介します。
彼女は、あの「ハリーポッター」シリーズの作者で、
まさに「新人」と呼ぶにふさわしい経歴です。
シリーズの第一作である「ハリーポッターと賢者の石」は、
彼女のはじめての小説です。
彼女は文学を学んだことはなく、
すべて独学で小説を書き上げました。
さらに彼女はシングルマザーとして幼い娘を育てながら、
仕事も収入もないギリギリの状態で、
「ハリーポッターと賢者の石」を書き上げました。
どのようにしてハリーポッターは生まれたのでしょうか。
ハリーポッターは、ある日電車のなかで突然イメージが湧き起こったそうです。
少しずつ書き進めていた「ハリーポッター」ですが、
親の死と離婚をきっかけに、安定した仕事を得ることが急務となりました。
ここで彼女に大きな決断がもとめられました。
・安定した仕事を得るため、教員免許を取得するか
・ハリーポッターに集中するか
そこで彼女は、今までだれにも読ませていなかった、ハリーポッターの草稿を、妹に読ませることにしました。
妹がおもしろいと思わなかったら、小説家は諦めよう、そう思っていたそうです。
妹は物語に夢中になり、ハリーの大ファンになりました。
彼女は小説家の道を決意するのです。
子育てをしながら、小説を書く、ギリギリの毎日をどうにか耐え、やっとの思いで書き上げたハリーポッターですが、
12の出版社に断られてしまいました。
その理由は、児童書として長すぎる、分厚すぎて子どもは読まない、ということです。
唯一出版に至った、ブルームズベリーという出版社がありました。
ブルームズベリー社の社長が、ハリーポッターの原稿を家に持ち帰ったところ、8歳の娘が勝手にそれを読んで
「パパ、これはほかのどんな本よりおもしろいよ」と感想を述べたのです。
8歳の娘が喜ぶなら間違いないと思った社長は、ハリーポッター出版の契約を結ぶことになるのです。
そうして、ハリーポッターは今日の人気に至ります。
この物語のポイントは、全て「新人」によるものです。
プロは、児童書としては長すぎると言って、価値を判断できず。
素人である、妹や社長の娘が「おもしろい!」と評価してくれました。
作者も「新人」、読者も「新人」
ハリーポッターは、「新人」によって生まれたのです。
さいごに
○自分の仮説を信じて、それを証明することが世界を変えること
○証明する手段として、勉強が必要になること
○世界を変える人を、それを支える「影の主役」でもいい
○「新人」だからこそ、世界を変えられる
本書では、他にも多数の偉人が紹介されています。
相撲ではなく、なぜ柔道が日本の競技として有名になったか
戦後の日本女性に、一番影響を与えた人物
など、書ききれないほど、紹介したいエピソードが多数掲載されています。
本書に興味がある方は、ぜひ手に取ってみてください。
私も、自分の仮説を立て、証明するため
日常の常識を疑うこと、それを証明するための手段を身につけること
を少しずつ意識していきたいと思います。